さわらの観劇ダイアリー

私が勝手気ままに舞台について喋るブログです。

オフィス・コットーネ『墓場なき死者』

セルフアドベント企画「観劇感想アドベント

6日目

 

オフィス・コットーネ『墓場なき死者』

 

出ましたよ!!!胸糞戯曲です!!!(大声)

ジャン=ポール・サルトルといえば、哲学者のイメージがあったのですが、戯曲も書いているとは知りませんでした。

 

タイトルからして不穏、哲学者の戯曲、色々な組み合わせから気づいたら下北沢に降りたって当日券を買ってました。

 

舞台は、1944年に行われたノルマンディー上陸作戦後のフランス。

自国の自由を勝ち取るために戦うレジスタンスの兵士たちは、ドイツの傀儡政権となっているペタン政権の民兵により監禁され、レジスタンスの隊長の所在を吐くよう拷問を受けます。

拷問を一人一人受けていく極限状態の中、心は屈しないと交わすレジスタンスたちの運命とは…。

レジスタンスも民兵もどちらもフランス人で、同じ国の人間同士が傷つけ合い、自尊心を失わまいとする姿は「人間の極地」を見せられている気がして終わった後にはブツブツと鳥肌が立ってました。

 

1949年に発表された当時、あまりの残酷さに途中で席を立つ観客もいたと言われるのも納得の鬱作品です。

 

ある程度物語が推測できるにせよ、レジスタンス側の拷問に屈せない状況、自我、自尊心、誇り、色々な感情を経た後の生存意識を容赦なく踏みつけていくので、その無慈悲さに耐えられる人には見てほしいなと思います。


実際、レジスタンス側よりも民兵側の方にスポットを当てて観劇していたのですが、彼らも反抗勢力同様、生きている自分を夢みてはいないようには見えました。

ただ、少しでも生き延びる為に、同じ国に生まれた彼らを「拷問」をしてでも、情報を得ないといけない。

この民兵たちのそれぞれの感情も一枚岩ではなく、拷問を重ねるごとに疲弊し、自分が揺らいでいく様が見て取れたのがよかったです。

 

ちなみに、民兵の中でも、ある人物だけがレジスタンスに自分を投影させない人間であるためか、この拷問をしている状況を客観視して、今後のレジスタンス側の行動を踏まえて、とある命令を部下にします。

その行動を見た彼が、手で口を抑えて感情を落ち着かせた後に「その方が人間らしいじゃありませんか」と言ったのは悲鳴あげるかと思いました…人間を語らないで欲しい…。本当に…。

 

DVDが発売されているので、興味ある方は是非買ってみてください。

http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/

 

 

 

かなりの余談なのですが、上記民兵を演じた阿岐之将一さん、お上品でしっとりとした雰囲気がよく似合う人なのですが、手つきに妙な耽美さがあり、拷問シーンがちょっとエロティックに見えたのは秘密です。