さわらの観劇ダイアリー

私が勝手気ままに舞台について喋るブログです。

2023年上半期の観劇雑記(4〜6月)

8月の後半に出した1〜3月の観劇雑記の後、放置しすぎていたら12月になってました。
継続しないと下半期やらないので今やります。
上半期総額チケット代(手数料除く)は最後に載せてます。チケット価格帯は総集編をやろうと思ってるのでその時で。
★は上半期ベスト。敬称略してます。

【2023年1〜3月はこちら】
2023年上半期の観劇雑記(1〜3月) - さわらの観劇ダイアリー

2023年4月

現地12配信9(合計21回)
劇場で観たやつが軒並み良かった。
なお、久方ぶりに推しさんのイベントに出席し、推しのマネと「この劇団面白いのよね」「私も行くんです!」って話していた舞台で推しさんと鉢合わせをする恐怖体験もあった。連れてくるんかい!

1. エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~
映画「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」の舞台版。高校の同級生の推しが出ていたので行った。
シラノ自体はNTL版で履修済みだっため、エドモン自体がシラノを演じているような、様々な要素が分かるのも良かったし、入れ子式で構成されていくのも面白かった。
楽屋を舞台美術としているからこその場面転換もとても良かった。

2.LiveUpCapsules「彼の男 十字路に身を置かんとす」
2020年のコロナ禍での中止を得ての再演。
シアターサンモールの一面構成になったけれども、2階セットもあり、縦横無尽に鈴木商店の人員が駆け回る姿はめちゃくちゃ良かった。
協賛企業が総合会社という異色形態だったのもあるけど普段劇場で見ない若いサラリーマン層がわんさかいて、そこも面白かったな…。
勤めてる会社の一大トピックを小説やら映画やら演劇やら芸術産業と絡めるのは良いのかもしれない。少なくとも講義的にやられるよりは頭に入るよね。分かる。(身に覚えがある)
金子直吉(山田隼平)の破天荒っぷりとそれを補佐し、下を束ねていく西川文蔵(猪狩和馬/JACROW)のコンビが熱い。
DVDもあるので是非気になった人は買って欲しい。
LiveUpCapsules | ライブアップカプセルズ|知らない日本を見に行こう
あと、来年3月に公演があるらしい。

★3.パルコプロデュース「ラビット・ホール
4月ウェルメイド枠。
本来であればKAAT版を兵庫で見るつもりだったが叶わず。出来れば比較したかったが、戯曲がとても良かった。
感想の中で、海外から輸入されてくる戯曲は「解決策に取り組む必要のない」という日常劇が非常にうまいと書いていたが、「解決策のないまま傷を癒そうとする」演劇は若手小劇場作家(特に現代口語演劇系)に多いと感じるので、商業プロデュースはもっと日本のストレート・プレイを取り入れても良いとは思う(なぜ日本人の脚本家からだとエンタメ思考になるのかはいつも疑問に思う。何が欠けているのか)

4.露と枕「わたつうみ」
宗教的・排他的コミュニティで生まれ育った二世である七人の神様が、それぞれを〝他人〟だと寛容する話。
それぞれが神様であったことよりも人間として生きることを選んでいく描写の変化が非常に美しい。宗教(の中でも一般的にカルト宗教と呼ばれる新興宗教)という生活基盤を捨てることはある意味″人生のやり直し″に近いと思う。

閑話休題:演劇で新興宗教を描く際にナチュラリスト系が多いのはなぜなのか。自然に対する信仰は確かに日本にも根ざしているが…。実在宗教のオマージュだと、否定した場合にフリークが見た時に問題になる可能性があるから…?

2023年5月

現地13配信10(合計23回)
この時点で100本超え。
毎月演劇作品20演目ぐらい見ていて若干自分の脳内処理どうなってんだろうと不安になっていました。安心してください。ちなみに11月末で平均19回、演目的に考えれば17作品くらいです。減りました。

★1.猿博打「とりつくひま」
めちゃくちゃ良いOPムービーを作成されていたところから行ったらめちゃくちゃ良かった。
武蔵野大学出身3人組(男2女1)で構成されたユニットなんですが、まぁ〜〜〜全員面白い!キャラが濃い!!
「とりつくひま」は、やみ・あがりシアターの笠浦さんが書き下ろした作品。
行方不明になってる彼氏の魂が欠伸によって3人にシームレスに乗り移っていく話で、それぞれのキャラの大混乱も極めて面白く…。また配信販売も期間限定ファイル共有で、ありがたすぎた。PCに落としてよく見てます。
12月の年末にはコント公演があるので、楽しみ。
https://x.com/sarubakuchi/status/1708814191283556810?s=46&t=tC5_T-5QhE8GdlVBpo1fow

★2.サルメカンパニー「スウィングしなけりゃ意味がない」
エンスポライド作戦を基に、ラインハルト・ハインリヒ暗殺計画からその後の結果までを描いた作品。
ほぼ若手俳優演奏家で構成されてはいるが、5000円で観て良いの!?と思ったりそれくらい完成度が高かった。
スウィング・ジャズの生演奏と硬派な脚本の構成、もっと注目されてしかるべき劇団。PARCOとか大きな舞台でやって欲しい。
2024年1月26日(金)〜2月4日(日)には92歳の福田善之氏の書き下ろし脚本で公演を行う。
28歳×92歳、桐朋学園大時代の師匠と弟子のコラボになる。楽しみ(その2)
https://x.com/salmecompany/status/1726525800277795222?s=46&t=tC5_T-5QhE8GdlVBpo1fow

3.劇団た組「綿子はもつれる」
5月ウェルメイド枠。
加藤拓也脚本もとい演出は、静かなドキュメンタリーっぽさもあれど、なんとなく居心地が悪い家族劇が多いなと思う。人間として不完全であることを優しく認められている気にもなれるが、終わり方がビクッとすることが最近多い。「いつぞやは」は体調崩して見られなかったのでWOWOWで12月9日に放映されるのが楽しみ。(その3)

2023年6月

現地10配信5(合計15回)
この時期から会社が多忙を極め出した(はず)

★1.鵺的「デラシネ」(配信)
3月に現地で観られなかったので、配信。
初めて見たポスターが亀甲縛り男女二人組だったため、フェティシズム的な芝居をする劇団だと思っていたが違った。
勘違いが解けた初めての芝居で(精神的に)めちゃくちゃにされたのは最悪で最高。
ハラスメントや性的消費の描写がエグいが、向き合い方も熱量も終わり方も全て良かった。円盤が欲しい。
今年の12月21日〜29日まで新作公演があるので見納めはこちらになるかもしれない。
http://www.nueteki.org/

★2. THE ROB CARTON「Meilleure Soirée」
コメディ作品だと分かっていて自ら足を運ぶのはこの劇団だけかもしれない。
関西の劇団なんですが、ゆるさと伏線の掛け合わせがめちゃくちゃに好き。
2020年コロナ禍の配信で知った。
ハードボイルド演劇(ほぼコント)のマチネを一通り見た後、マチソワの間に起こった俳優たちのラフな掛け合いからの、ソワレ公演。
そんなこと起こる!?って思ったが、それがコメディ。疲れた時に見たい。

★3. 木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」
古典劇は東西関係なく苦手なんですけど、木ノ下歌舞伎のアレンジの仕方はめちゃくちゃ好き。私はなんで9月の勧進帳を見れなかったんだ(体調不良)
FUKAIPRODUCE羽衣の糸井氏が作る妙〜ジカルソングの息抜きできる音楽と意味がないようである歌詞に包まれて優しい気持ちになり泣いてしまうんですが、そもそも辛めの演劇が上手いと思う。世知辛さの中にポップさがあるというか。

★4.ある馬の物語
6月のウェルメイド枠。
鉄骨剥き出しな建設現場風の舞台に集まる肉体労働者たち、ふらふらと足場を歩く成河が足を踏み外し、斑馬であるホルストメールの一生を描く物語へと変わる。
成河が周りよりも小柄でありつつも存在感のある役者であることも功を奏したキャスティングであったと思う。
一幕最後のシーソーのような機械装置はアトラクションみたいで良かった。

上半期はこれに加え、演劇的には「血の婚礼」「イェルマ」などで知られるフェデリコ・ガルシア・ロルカのアマンテと言われるラファエル・ロドリゲス・ラプンの最後の夜を描いた戯曲「暗い石」を読みながら見たり、フアン・ラミレス・デ・ルーカスとの日々を描いた「EL ÚLTIMO AMOR DE LORCA」を見たりした(いずれもスペイン語のみの字幕なし。輸入されないかな。)

下半期もあとちょっと!皆様も良い作品に最後まで出会えますように!!


<おまけ:上半期チケット総額(手数料を除く)>
1〜6月までの内訳:
観劇回数:129回
演目:116作品(内115作品初観劇)
2023年:88作品
2023年内訳:現地:73作品、配信等15作品
〜2022年:26作品

チケット総額(手数料除く):
¥551,200
チケット内訳:現地¥482,000、配信等¥70,800

2023年上半期の観劇雑記(1〜3月)

もう8月も終わるけども。

北関東の果てから毎週のように特急に乗った上半期。
冬のボーナスが思ったより多かったので、好き勝手に100本は観て良い!という自分勝手ルールを課したら5月で100本観終わってしまった。
演劇、なんでそんなに面白いんだ?

115作品分書くのはさすがに無理なので、月毎に好きだった演劇についてミニマムに書きます。
今回は前半、1〜3月までの舞台の感想総集編です。
書いてたら3000文字以上になったので分けました。
上半期総額チケット代(手数料除く)を出しましたが、思った以上にグロい金額だったので、後半に出します。
★は上半期ベスト。敬称略してます。

2023年1月

現地9配信11(合計20回)
記憶が薄れているが、繁忙期ゆえに身体が動かず新幹線を2回使った記憶がある。お芝居一本分の損失。

1.やみ・あがりシアター「すずめのなみだだん!」
2022年の「マリーバードランド」で名前を知り気になっていた劇団。主宰の笠浦静花の脚本が良い。
土を踏むことにより神の意思を聞いて行動するアニミズム系の架空の宗教団体を抜け出した女の子2人の「外」への触れ方や関わり方の違い、その2人を取り巻く人の優しさが心地良かった。
2023年9月7日〜9月10日に新作あるよ!
やみ・あがりシアター//

2.NTLive「レオポルトシュタット」(映画館)
2022年10月に小川絵梨子の演出で見て、興味を持ち比較したくて観た。レオポルトシュタットこそ〝人種〟の話だと思っていたので、リプレゼンテーションとして描こうとは思ってないんだなぁと思ったりして、西洋、欧米の価値観摩訶不思議と思ったのは別の話。
NTLiveは映画館でブロードウェイ作品が観られるんですが、小劇場価格で観られるので行ってしまいがち。
2023年9月8日からの「ベスト・オブ・エネミーズ」が気になっている。行けたら良いな。
ベストオブエネミーズ | ntlivejapan |bestofenemies| ジェームズ・グラハム| NTLive |デヴィッド・ヘアウッド|ザカリー・クイント|ジェレミー・ヘリン

3.ホリプロ「宝飾時計」
根本宗子作日を観たくて。
根本宗子の描く人間像って基本的に向き合いたくないなと思う感情に真っ向から立ち向かうんだなって気づいた。(めんどくさくて、愛おしい)
アラサー最後の年に観れてよかったな。大人になりきれない部分があっても良いとも思えた。ラストに入る前の「青春の続き」を歌う高畑充希がエモい。

4.ケダゴロ「ビコーズカズコーズ(完全版)」
ダンスカンパニー。
国際交流基金YouTubeで「ビコーズカズコーズ(初演版)」を配信していたのを機に。
1982年の松山ホステス殺害事件の福田和子を基にしている。ダンスとあるが、鉄パイプで覆われた茶の間は牢屋のように見え、刑事として現れるニュートンアインシュタインや彼らから逃げるように上部の鉄格子に駆け上がる8人の和子たちを見るに、ダンスを踊るためのダンス作品ではなかった。
15年間整形を繰り返し時効成立21日前に逮捕された福田和子の壮絶な人生を、肉体で表現する様が良かった。

5.風姿花伝「おやすみ、お母さん」
1月のウェルメイド枠。
那須佐代子・那須凛親子の二人芝居。
母親との向き合い方ってなぜこうも難しいのか。と、主題ではないだろう部分でかなり没入して観ていたと思う。
自殺をしたい娘と、それを止める母親の話なのだが、終始喧嘩腰になりがちで、まるで自分と母親の関係性を観ているようだったのだが、これはきっと人生的にどうやって母親と関係性を気づいてきたかで変わると思う。良好な関係の人はピンとこないと思う。
タイトルとなる台詞がかなり大きな声出ていたのも含め、母親相手にこんなアグレッシブに図太さを発揮できる人でも人生に絶望して一直線に死のうと思うのかとは思う。

2023年2月

現地9配信12(合計21回)
配信でも演劇を観れてしまう人間なので…。なんやかんや多かった。繁忙部署から繁忙部署に回される小間使い人間なので現地は控えめ。

1.惑星ピスタチオ「破壊ランナー」(youtube)
1月に「海底二万里稽古初日」を配信で見て、腹筋善之介のパワーマイム演出を見てみたいなとおもってYouTubeで見たんですけど、めちゃくちゃ面白かった。1995年の芝居だとは思えない色褪せなさ。
人が生身で音速を超える時代という設定も面白いのだけれど、素舞台で肉体と勢いのある台詞で勝負しているところも含めて痺れる。豹二郎ダイヤモンド〜💎
佐々木蔵之介の演技、この時からの蓄積があると思うと色々と面白かった。

★2.木ノ下歌舞伎「桜姫東文章
先に申し上げておくと、私は岡田利規の作演出を面白いと思っていなかった人間である。
「未練の幽霊と怪物」が本当に肌に合わず、何を見させられているんだ?という感覚から一生観に行かん!とすら思っていた。のに、めちゃくちゃ掌返しした作品。サンキュー、成河。
古典芸能というのは、擦りに擦られているので、新しく演出するのも大変だろうなと思うが、話が分かってる人間が多いからこその大胆さもあると思う。
舞台美術のナイトプール感や衣装のポップさから来る若さや、流れ続けるチルっぽさを感じる音楽とゆらゆら身体を揺らしながら気怠そうに話す役者たちの口語訳の緩さ。
なんとなく「何にもなれない存在」として生きているように見えて、演劇って役者が「何かになる」から成立していると思っているが故に、衝撃を受けた。
ハレルヤ!で解放された気分になったので、またやって欲しい。

3.FUKAIPRODUCE羽衣「プラトニック・ボディ・スクラム
国際交流基金YouTubeで「スモール アニマル キッス キッス」を配信していたのを機に。
耳に残る歌詞は一見言ってること分からないや!って私はなっちゃうんですけど、とりあえず観に行って欲しいと懇願するタイプの演劇。
演劇は何にでもなれると思いながら、演劇人生を振り返る役者たちのリアルな世知辛い語りで周りが引くほどに泣いた。

4.博士の愛した数式
2月のウェルメイド枠。
80分という短さは博士の記憶容量。
原作が好きなのもあるけれども、上手くまとまっていて、観やすい作品だった。
た組の加藤拓也の演出は静かだからこそ、心に入り込む辛さを感じる時があるのだけれど、心への入り込み方が優しくて心地よかったのを覚えている。
博士と私と私の息子の柔らかでそれでいて尊重された関係性。好きな作品を演劇で観られたことが嬉しかった。

2023年3月

現地21配信5(合計26回)
推し劇団であるパラドックス定数の公演を10連休にして全通した。11月から3月まで2.5馬力くらい働いたので許された所業。

1.miuna「ザ・フラジャイル レフト/ライト」
「ナイゲン(暴力団版)」の脚本演出、日本のラジオの屋代秀樹さんの作品を観てみたかったため。
レフトは左翼、ライトは右翼を誇張してコミックキャラ的に描かれていて、個人的にはゲラゲラ笑ってしまった。政治的トピックに足突っ込んでる人ほど面白いとは思う。
レフトの中核派あがりのおじ(い)さん(横田慎太郎)の斜め上の行動と、ライトの右翼団体の令嬢(福井夏/柿喰う客)と秘書(渡辺実希)のバッチバチのレディースバトルを収めきれなくてアワアワしてる議員候補(山森慎太郎)と令嬢の彼氏(菊川耕太郎)が印象的だった。

★2.木村美月の企画「幽霊塔と私と乱歩の話」
阿佐ヶ谷スパイダースの木村美月さんの個人企画。
江戸川乱歩の「幽霊塔」を読んでいないので、下敷きにした内容を知らない前提で。
大学の敷地内に入り込んで上映会をしたり、主人公にしか見えていなかった幽霊塔が上映会仲間にも見え始め、幽霊塔へと入り込むシーンなど、子供の頃に読んだ童話やSFの中にある「ワクワク感」の積み重ね、ノスタルジックさもふくめて個人的にはめちゃくちゃ好みだった。
複数の木枠で様々なものを表現していて、その使い方も好きだった。

★3.パラドックス定数「四兄弟」
2020年の無料配信でドツボにハマり、だんだんと観に行けていない公演があることに悔しくなり、ついに(問答無用で)休みを取って全通しました。めちゃくちゃ楽しかった。
ロシア革命からソビエト連邦史への変遷を兄弟というミニマムな構成で演じていく。
劇団員のみで行われる上でいつもの持ち味と役割が当てはめられているにも関わらず、なんでこうも面白いのか。思わず長文でブログにも残した。
7500km先の彼方に揺れる - さわらの観劇ダイアリー
9/1からは2018年〜2019年にシアター風姿花伝プロデュースで行われた7公演のDVDコレクションが完全受注生産で予約開始するし、2024年の新作公演も楽しみ。
paradoxconstant – パラドックス定数 公式ウェブサイト

4.マリー・キュリー
3月のウェルメイド枠。
ラジウムを発見したマリー・キュリーの半生を描いた作品。
口コミで段々と顧客が増えているのを見て、全通期間中にダッシュで駆け込んで、久々に自らスタオベした。
マリー・キュリーの友人として、アンヌという娘が出てくるのだけれど、その子がラジウムガールズとして働き放射能被害に遭ってしまうシーンでは、髪含めた全身に蛍光色の黄緑が散らばり、それが綺麗でゾッとしてしまうところもあった。
フェミニズムも意識された作品で個人的には入り込みやすい作品だったと思う。

2023年3月末時点で
観劇回数67回、初観劇作品55作品。
マジで北関東に住んでる人間の動きをしていないと思うんですが、後半に続きます。

7500km先の彼方に揺れる

パラドックス定数『四兄弟』を観ている。
なぜ現在進行中かと言われたら3月17日から26日までの10日間、全公演観に行く予定なので。
演劇的技巧が詰まっており、120分ほぼ小道具すらなく会話だけが存在しているにも関わらず、毎回体感は1時間ぐらいなので、個人的にはめちゃくちゃ面白いし刺さっている演劇なのだが、かといって、非の打ち所がないという感覚でもないので、ネタバレも含んで言語化してみた。
paradoxconstant – パラドックス定数 公式ウェブサイト

『四兄弟』はロシア革命からソビエト連邦史における各著名最高指導者をモチーフに歴史を描き、現在へと繋がる一種のアネクドート的寓意劇だと思った。
社会派、と呼ばれる枠の劇作家だと野木萌葱氏のことを認識しているが、この界隈に垣間見える「作者の思想」が見えず、あくまでも〝ただ描く〟ということで、社会主義共産主義の理想やその不確実性を客観的に見れることが良い。

また、固有名詞が出てこないからこそ、抽象的に描かれており、あくまでもその指導者個人への追及として為していないことも個人的には好みの描かれ方をしていた。
四兄弟は彼らそれぞれの意見や主張を言い合い、赤いノート(=その国に対する主導権)が移るたびに政策転換していく。
擬人化、というと形骸的に思えてしまうのだが、人格を宿すことによってシームレスに歴史の転換が見えるというのが面白い。
最後の場面では、彼らはソ連という国そのものだけでなく、現在の世界各国としても人格を宿しているように見えた。
(長男次男四男はきっと皆同じように思うだろうけど、三男は日本だと私は思った。※追記1)
〝他国に合わせること〟と、外交として他の国と同様のポーズを行うことの意義、この舞台をソビエト連邦〜現ロシアの歴史を模したとだけ考えることは出来なかった。

兄弟というミニマムな構成に歴史・主義・概念・とマキシマムな構成を幾重にもなるレイヤーとしてキャラクターに仕上げた手腕も見事だと思うが、このじゃじゃ馬さながらの戯曲でかつ毎回の役割もこなす劇団員たちの精鋭っぷりにも感嘆せざるを得ない。
リアリスティックな部分もありつつも、コミカルな要素が多く、オーソドックス公演含む直近の公演と比較すると明るい印象を受けるが、その実、最後はしっかりと観客に問いを投げかけている作品だと思えた。

批判的なことを言うと、ある程度の近現代ジャンルの知識がないと、〝刺さる〟ポイントまで踏みこめずにnot for me、not my styleとなる人は出てくるなと感じる。
知らなくても面白いとは思うが、答え合わせをする労力を手にした人たちは面白さに繋がり、言語化できる作品だなとは感じた。
考えることを重きに置いてる作風なので、これ自体は問題ないと思うが、観客の世界史力が試されているなとは感じたし、一回観劇しただけだと、物語を掴めずに終わる人もいるだろう。実際初日はパズルの埋め合わせで終わった感覚があった。
ただ、外部作品(ズベズダ等)と違い固有名詞を全く入れずに描いているので注釈を入れられるわけもない。ここで彼らキャラクターの要素に気づいて欲しいのだろうというセリフやアクションが散りばめられているため、観客に対しての信頼なんだろうと思っておくことにする。

また、これは私が感じたことなので他の人がどう思うかという点ではあるが、劇団員以外がやって面白い芝居なのかという疑問はある。
当て書きの良さが出ている上に、パラドックス定数の芝居は会話のキャッチボールの仕方や距離感にどことなく変化球が存在していて、今回もそのテンポの変化が緩急や落とし所を生み出していると思う。
今のところ、6公演観ていても飽きないし、ずっと面白いんだけど、劇団員補正がかかっている気がするのは否定しきれない。
パラドックス定数は台本を購入できるので買って必ず読むのだけれど、ト書きも含めて、情報量が多い。これを体現する劇団員の表現?言語感覚?も併せてこの劇団なんだろうなとは毎回思っているけれど今回は特にそう思った。
(逆を言えば、劇団員のレイヤーがあるので、劇団員を知らない状態又は、当て書きだろう部分を踏まえた上でシャッフルで見てみたい気持ちもある)

 

(余談+追記予定)
今回、偶像崇拝に対しての風刺も含まれているなと感じているんだけど、観るたびに若干の背徳感とリビドーを感じている。
どうしてくれるんだ野木先生。
2023/3/25 07:16追記
追記1:最後の三男、他の人の感想でEUと見てそちらのほうがありえそうだと感じた。

2023/3/29 06:28追記
先日、長男役の小野ゆたか氏が「ミクスチャー」と発言していて、層が重なるというより混合物感がありしっくり。

 

脚本・演出家以外の推し裏方の話

いきなりですが、下記の記事を2ヶ月ほど前に読んだのが今回のキッカケです。

https://note.com/nevula_prise/n/n0238e9145e85

舞台美術についての定義もきちんと書かれており、このブログを書いた劇団肋骨蜜柑同好会の水口昴之氏の好きな舞台美術家さんが掲載されていて、楽しく読んだ後、ふと観客側として疑問が湧きました。

もしや、大半の人は俳優と脚本・演出だけで観劇候補決めてるの?

とあるTwitterのスペースに参加した時も思ったんですけど、推し脚本・演出家の話はよく聞くけど、照明とか音響とか舞台美術とか衣装とかにも推しがいる話は聞いたことがない。

ちょっと待ってくれ。

推しの姿を美しく照らす照明家が誰かとか、良い塩梅の音楽で観客の心を揺さぶってくる音響とか、その舞台の想像の背景を担う舞台美術に推しがいないの!?マジで?好きな芝居に巡り合う確率が上がるのに??勿体ない!!

という気持ちを押し込めきれなくなったので、私の推し裏方の話をします。

本格的に観劇し始めたのが2016年以降なので、偏ってるとは思います。

(先に言っておきますが、今晩2023年4月3日(日)23:20〜翌3:22(2本立てのうち後半なので実質4月4日(月))NHKBSプレミアムで再放送される「タージマハルの衛兵」は録画して寝てください。後生のお願いです。推しキャストと推しスタッフしかいないので是非観て欲しいです。)

松本大介さん(照明デザイン)

2023年2月には読売演劇大賞の優秀スタッフ賞を受賞されていたので、記憶にある方も多いのではないでしょうか。

照明、と一口で言ってもオペレーターとプランナー、デザイナーが違うことがありまして。

松本大介さんはデザイナーを主にされてる照明家です(プランナーもやっているかもしれませんが、オペレーターのイメージは正直ない)

イキウメ「太陽」(2016)や「タージマハルの衛兵」(2019)、DULL-COLORED POP「福島三部作」(2021)、劇団チョコレートケーキ「帰還不能点」(2021)、風姿花伝プロデュース「ダウト ~疑いについての寓話」(2021)等、作品の名前を上げれば数知れず、ひっぱりだこな印象があります。

松本大介さんの照明は「役者やモノの際立たせ方」が上手く、その人物を見てほしい、その言葉に効果を与えたいという意図がとても分かりやすいんですよね。しかもゾッとするほど美しい。

濃淡、なんでしょうか?光を当てた役者やモノが帯びる「白さ」が抜群に違うんです。知らないで見ていても、あ、この舞台の照明デザイン松本さんかも?と思って当たるほど。

光と闇のコントラストが(おそらく)白と黒で作られていないのも理由にあるんだろうなと思います。

ちなみに個人的ですが、松本大介さんが照明をやる舞台は舞台そのもののクオリティも高いので、安心して見られるんですよね…。

イキウメ「太陽」冒頭の『太陽の光』は必見…!

- YouTube

二村周作さん(舞台美術)

日本において舞台美術家が行う仕事という意味では、大道具・小道具によってデザインされた演技空間(舞台装置)のことを、通常、舞台美術と呼んでいる。

【引用:一般財団法人 地域創造

https://www.jafra.or.jp/library/letter/backnumber/2004/117/4/1.html

舞台美術って、その場の空間を想像する一種の手助けになったり、構成する一部として見合った世界観でなければいけないと思うんですが、二村周作さんはその世界観の作り方が丁寧で、かつ細かいところまで作られていて、きちんと調和しているので、とても好きです。

「タージマハルの衛兵(2019)」や「生きる」(2020)、アルトゥロ・ウイの興隆(2020-2021)

今年のエリザベートも二村周作さんだったら観に行きたいなと思っていたりします。

個人的に好きなのは「浮標」(2016)の、あのまっさらな砂だけで構成された舞台美術…。あの上で全て成り立たせるのだと思うとワクワクします(あと、2003年の島次郎氏の浮標の舞台美術と比較しても面白いと…)

この世の舞台美術家、全員写真集作ってほしい…。

鎌田朋子さん(舞台美術)

劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」(2013.2016.2019)や「遺産」(2018)など、第31回公演以前のチョコレートケーキの美術や、LiveUpCapsulesの「スパイに口紅」(2017)、「彼の男 十字路に身を置かんとす」(2018)、劇団 俳優難民組合「絢爛とか爛漫とか」(2021)など、主に小劇場系でよくご活躍されているのを見る方です。

余分なものが一切なく、それでいて必要なものが置かれている。置かれている調度品の一つ一つも歴史を感じるような、一つ一つに魅力が詰まった印象を受けます。

開場入りした時に、その空間に一気に引き込んでくれるのも舞台美術の醍醐味だと思っているのですが、その最大限の魅力が詰まった方だと思います。

何となくですが、花まる学習会王子劇場や楽園のせいで二面舞台でのイメージが強いです。

土岐研一さん(舞台美術)

イキウメの全作品の舞台美術デザイナーさんです。

どの舞台美術も好きなんですが、やはり「太陽」(2016)のあの丸い大きな照明や「天の敵」(2017)の後ろにびっしり詰まったビン類を前にして置かれた家具たちの美しさが印象的。

「外の道」の前面格子柄のスリガラスで構成された壁も、あのスリガラスの向こう側から何か出てくるかも知れないと思わせるぐらいには透けて見えて、個人的にワクワクしてしまったりしました。

イキウメ以外だとDULL-COLORED POP「福島三部作」(2021)や「てにあまる」(2021)等…。

前田文子さん(衣装)

ファンもめちゃくちゃ多いなと思ってる衣装家さんです。

新国立劇場バレエ団の衣装なども出かけていて、色んな舞台で活躍されています。

「骨と十字架」(2019)の役者陣のキャソック姿のラインの美しさに目を惹かれて調べ始めたのですが、どの衣装も本当にラインが綺麗なんですよね…。

キャストの人たちが「着慣れている」様に見えるほどに、ピッタリとフィットしていて綺麗なんですよね。

スーツやドレス、ワンピースなど、どんな衣装も見惚れてしまうぐらい素敵なんですよね。

個人的な話ですが、去年観たミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』(2021)のケンシロウの散りばめられた装飾の入ったショルダーやラオウの赤いマントも、ただの赤ではなく豪奢な模様が入っていて、北斗の拳が「ミュージカル」仕様の衣装として成立されとる!!と原作ファンとしてめちゃくちゃに感動しました。

 

まとめ

書いていて思ったんですが、興味があって観に行って好きだ!と思った舞台は好きなスタッフさんで作られていることの多いこと…。

照明だと加藤温さんや服部基さんとか、舞台美術だと長田佳代子さんとかまだまだ好きな人がいるのですが、次回にまとめたいなと思います。

音響さんは、耳がそもそもそんなに良くないので、まだ見つけられてないのですが、今後見つけていきたいです。

 

ロルカまたはダリをモチーフにした海外戯曲(舞台)まとめ(2023年5月6日追記)

Hola〜!!

色々(※1)あって、ロルカとダリとブニュエルの史実を漁り込んだ結果、彼らの関係性ってなんだよ…と頭を抱えた方はさぞ多い事でしょう。
そして、調べていくにあたって、数々の彼らをモチーフにした作品を目の当たりにします。
「Little Ashes(邦題:天才画家ダリ 愛と激情の青春)」という伝記映画が有名ですが、彼らの関係性を描いた作品は、映画だけではないんですよ…!!
というわけで、彼らの関係性について、またはそれをモチーフに組み込んだ戯曲(脚本)についてまとめてみました。
(ついでに彼ら個人+aの戯曲も記載。ブニュエルは探しているけど見つからず)
スペイン語もイタリア語も履修したことのない筆者がGoogle翻訳などを用いて纏めているため、説明におかしな箇所があればコメントください。
(一気に書いているので、後半になるほど雑です)
なお、これらの戯曲はタイトルをTwitterで検索かけると関係性のオタク的に嬉しい写真が見れたりします。

LA ROSA DEL MIO GIARDINO

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著者:CLAUDIO FINELLI
言語:イタリア語
劇場:Teatro Civico 14

Siamo due spiriti gemelli. Ecco la prova: sette anni senza vederci e abbiamo coinciso in tutto come se parlassimo tutti i giorni. Grande, grande Salvador Dalí.
(Federico García Lorca)

ダリがロルカに送った40通にも及ぶ手紙が残っている反面、ロルカがダリに送った手紙は7通しか残っていない。この手紙たちから着想を得て、 9年間に及ぶ実在と架空の手紙の受け答えにより、彼らの詩、絵、友情、愛に近い感情、言葉を紡いだ作品とのこと。
ロルカとダリのお互いを追いかけるような渇望と癒しが巡るめく語られ、彼らの(幻想上の)最後の踊りは、死後、永遠となる。

写真の手のひらから交わるこの触れ合いからも分かるエモーショナル…。

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プロモ動画もかなり良いので、是非見てください。
参加動画:
La rosa del mio giardino PROMO - YouTube
戯曲も販売されていますが、出版元には現在ないようです。(ただ、各サイトに書籍があるのは確認できているので、イタリアからの個人輸入などに詳しい方がいたら教えて欲しいです…)
参考URL:
Napoliclick - Home

FEDERICO & SALVADOR. Las horas oscuras y doradas

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著者:GERARDO BARRIOS
言語:スペイン語
劇場:INSULARIA TEATRO

マドリード学生の居住地、パリの超現実主義、ニューヨーク市キューバの経験、ラバラカ大学での演劇結社、カダケス海岸、彼らが数週間過ごした特別な友情は、暗く黄金に輝く。
海岸のシーンではロルカとダリが膝枕していたりしますし、友情から一線を越えたであろう情も描かれていそう。
参考動画:
FEDERICO Y SALVADOR Las horas oscuras y doradas - YouTube
参考URL:
'Federico & Salvador. Las horas oscuras y doradas' con Insularia Teatro - ULL - Agenda

 

Antes del Ocaso

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著者:Isabel Balboa
言語:スペイン語

ロルカ、ダリ、ブニュエルが、そして、ダリの妹であるアナ・マリア・ダリが出会い、夢を求めたマドリードで、何年にもわたる幻想と競争を描く。
めっちゃ普通にキスシーンがある。
参考動画:
Entrevista con el elenco de ""Antes del ocaso" - YouTube
参考URL:
Galeria Teatral: ANTES DEL OCASO

EL INFIERNO DE DALÍ Y LORCA

著者:?
言語:スペイン語
原文訳すと「ダリとロルカの地獄」
ダリとロルカ、彼ら2人と、ガラとマグダレーナ、彼女ら2人を通して描かれる愛、幻滅、寂しさ、痛み、性別。彼らが語ってこなかった、政治的、「社会的瞬間」を切り抜く。彼らにとっての地獄は何だ?
との問いかけも含めて興味が湧く。
参考動画:
Cuando caen los Ángeles, el Infierno de Dali y Lorca - YouTube
参考URL:
http://idehados.com.ar/project/el-infierno-de-dali-y-lorca/

LOS ABORIGENES: LORCA, DALÍ, BUÑUEL

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著者:Felipe Loza

言語:スペイン語
2022年3月に公演が行われる予定の模様。

(定期的に行ってるようです。去年もやってたので)

ロルカ視点の物語で、彼がダリとブニュエルマドリード学生寮で友達になった後、ニューヨークに旅行する話。とのこと。

ロルカの作品群や文章を用いながら、彼の人生を再構築していく。どうやら「原住民」が彼の思想、主義の一部として表れていき、彼らは互いにジョークを交えながらお互いの心情に葛藤していく話のよう。

昨今では、差別用語として扱われることの多い「アボリジニ」は海外だとまた別なのだろうか。

動画はFacebookが主なよう。

参考URL:

'Los Aborígenes: Lorca, Dalí, Buñuel' - Kulturklik

Buñuel, Lorca y Dalí

f:id:sawaranohitorigoto:20220110165221j:image

著者:?
言語:スペイン語
劇場: Teatro del Temple
彼らは学生寮で情熱的に生まれ、カダケスの宿舎で緊張し、ロルカの死と共に苦痛で壊れる関係を築く。 3人の友達の芸術界について話すために、時々、彼らの深い友情について話すために…。

Buñuel, Lorca y Dalí - YouTube

参考URL:

Teatro del Temple | Buñuel, Lorca y Dalí - Teatro del Temple

 

LORCA/DALI

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言語:スペイン語
2022年5月に突如として現れた新作(?)ロルカとダリの戯曲。
2人の男の愛の経路を描くことはもはや私たちを驚かせない。とかいう劇評(?)があるので、定番なんだろうな。という気持ち。情報が少ない。

参考URL

La obra Lorca / Dali se estrena el 7 de mayo en el Teatro El Convento

 

【番外編】ロルカがモチーフとして出てる舞台

El último amor de Lorca

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著者:Miguel Murillo
言語:スペイン語
ロルカと(ロルカの最後の相手と言われている)ルーカスの最後の数年間を描いた作品。
男同士のタンゴもある。
トレーラーが綺麗。
参考URL:

https://teatring.com/es/produccion/el-ultimo-amor-de-Lorca-ex3/

参考動画:
LA ÚLTIMA CARTA DE FEDERICO GARCÍA LORCA - YouTube
(2023/4/9 追記)
全編YouTubeで公開されているようで…スペイン語分かる人は是非…
ESTRENO: "EL ÚLTIMO AMOR DE LORCA" GRAN TEATRO CÁCERES - YouTube

Duende o la travesía de Lorca

言語:ペルー?
参考動画:
Teatro en Grande: 'Duende o la Travesía de Lorca' - (13/02/2021) | TVPerú - YouTube
参考URL:
"Duende o la travesía de Lorca" se presenta gratis – Enterados

La Piedra Oscura
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(2023年5月6日追記)
著者:Alberto Conejero
言語:スペイン語
ロルカの最後のアマンテ(諸説あり)と言われているTHREE Rsことラファエル・ロドリゲス・ラプンの最後の夜を描いた戯曲。
ラプンと、ラプンを監視する若い兵士の二人芝居で描かれることが多いようですが、映像がフルで公開されている演出だとロルカがラプンの側に〝死〟を漂わせながら存在している。やばい。
「暗い石」というタイトルで日本語訳をクセックACTの田尻陽一氏がしていて掲載・出版もしているので、訳を読みながら見ることもできます。
blog 水声社 » Blog Archive » 11月の新刊:21世紀のスペイン演劇①
参考URL:“La Piedra Oscuraâ€: Defensas irremediables | El Semanario Sin Límites
フルURL:La Piedra Oscura, de Alberto Conejero (MÉXICO) TEATRO - YouTube
(メキシコで公演されたときのもの)

 

【番外編2】ダリがモチーフとして出てる舞台

Dalí versus Picasso

言語:スペイン
ダリとピカソの二人芝居。
なんかこれも戯曲があるっぽい。Amazonで検索すると出ますが、輸入できなくて挫折。
参考動画:
"Dalí versus Picasso" - TEATRO ESPAÑOL - YouTube
参考URL:
DALÍ versus PICASSO | Teatro Español y Naves del Español

EL SUEÑO DE DALÍ EN UNA NOCHE DE PICASSO

言語:?
スペイン語字幕のYouTubeの動画がある。
ダリの描いた絵画をモチーフにしたオペラっぽい。
見てるだけで悪夢に苛まされる気持ちにはなる。

参考動画:

EL SUEÑO DE DALÍ EN UNA NOCHE DE PICASSO Spanish sub - YouTube

 

【番外編3】ダンス系

La miel es más dulce que la sangre

言語:スペイン語
動画を見てもよく分からなかった。
題名にダリの描いた絵の名前がつけられてる。

参考動画:
La miel es más dulce que la sangre (Clip) - YouTube
参考URL:
La miel es más dulce que la sangre. L´Explose Danza (Colombia)

Mi Amigo Lorca

f:id:sawaranohitorigoto:20220110165635j:image

言語:スペイン語
これもダンスっぽい。
参考URL:
Eventos en Mendoza - Agenda Cultural de Mendoza

 

まだまだあると思うのですが、一旦これで…。

他にもあったらコメント欄で教えて…ください…。

(灰燼に帰すオタクより)

 

追記:
ロルカ自身の書いた戯曲も面白いので、どこかで読んでみてくださいね…。
2022年年9月から「血の婚礼」が上演されるので、みんな見てね!
『血の婚礼』 | 【公式】ホリプロステージ|チケット情報・販売・購入・予約
↑2023年5月14日に衛生劇場で放映決定!

あと、日本でよく演じられるのは「イェルマ」と「血の婚礼」だなとおもうんですが、「マリアナ・ピネーダ」を演っているところを観たことがない。
どこかやってくれないかな。

NTLive『戦火の馬』

セルフアドベント企画「観劇感想アドベント

7日目

 

National Theatre Live『戦火の馬』

https://youtu.be/edt2R9mqBw4

 

およそ1年ぶりの映画館への訪問がこちらの舞台でした。

馬界隈(?)で評判がよく、また、そのクオリティの高さからNTLiveが発表されたら行くべき、みたいな感想をチラホラ見たのがきっかけ。

 

そもそも、このNTLiveって何ぞや?とか思っていたので調べたところ、以下の説明とのことでした。

『ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)は英国ナショナル・シアターが厳選した、世界で観られるべき傑作舞台を こだわりのカメラワークで収録し各国の映画館で上映する画期的なプロジェクトです。』

ナショナル・シアターはイギリスにある国立劇場とのことで、日本で言えば新国立劇場にあたるのかな?

そんな劇場で行われた演目を映画館で流しちゃおう!というものだそうです。

 

海外戯曲そのものに興味を持っていくことがなかったのですが、トレーラー見ておもろそう。と思っていたのが大正解。めちゃくちゃに面白かった。

 

第一次大戦を舞台に、軍に徴用され最前線に送られた一頭の馬とその飼い主の青年との友情の物語ですが、この物語に出てくる動物は皆パペットで表されます。

 

パペットというと、某ウシくんとかえるくんを思い出すのですが、戦火の馬でのパペットは木組みで出来ており、それを2〜3人で動かしていきます。

かなり複雑な動きができるほどに細やかに設計されたパペットと、そのパペットを動かすパペッティアの巧みな演技により、本当にその場に馬がいるかのように感じました。

しかも、この馬たち、ちゃんと感情がある生きている馬なんですよね。

耳や尾っぽの動き、首の動かし方、鳴き声、全てを使って喜怒哀楽が表現されていくので、馬たちに対してちゃんと感情移入ができる分、戦争に巻き込まれていく姿には心が痛みます。

 

この物語の主人公はジョーイという馬で、このジョーイの目を通して映されていく戦争と、その戦争に徴兵されていく人々の末路の描き方にも目を見張ります。

 

12月1日から1月31日までお家でも観れるとのことなのですが、英語字幕しかないとのことなので、どうしようかな。

オフィス・コットーネ『墓場なき死者』

セルフアドベント企画「観劇感想アドベント

6日目

 

オフィス・コットーネ『墓場なき死者』

 

出ましたよ!!!胸糞戯曲です!!!(大声)

ジャン=ポール・サルトルといえば、哲学者のイメージがあったのですが、戯曲も書いているとは知りませんでした。

 

タイトルからして不穏、哲学者の戯曲、色々な組み合わせから気づいたら下北沢に降りたって当日券を買ってました。

 

舞台は、1944年に行われたノルマンディー上陸作戦後のフランス。

自国の自由を勝ち取るために戦うレジスタンスの兵士たちは、ドイツの傀儡政権となっているペタン政権の民兵により監禁され、レジスタンスの隊長の所在を吐くよう拷問を受けます。

拷問を一人一人受けていく極限状態の中、心は屈しないと交わすレジスタンスたちの運命とは…。

レジスタンスも民兵もどちらもフランス人で、同じ国の人間同士が傷つけ合い、自尊心を失わまいとする姿は「人間の極地」を見せられている気がして終わった後にはブツブツと鳥肌が立ってました。

 

1949年に発表された当時、あまりの残酷さに途中で席を立つ観客もいたと言われるのも納得の鬱作品です。

 

ある程度物語が推測できるにせよ、レジスタンス側の拷問に屈せない状況、自我、自尊心、誇り、色々な感情を経た後の生存意識を容赦なく踏みつけていくので、その無慈悲さに耐えられる人には見てほしいなと思います。


実際、レジスタンス側よりも民兵側の方にスポットを当てて観劇していたのですが、彼らも反抗勢力同様、生きている自分を夢みてはいないようには見えました。

ただ、少しでも生き延びる為に、同じ国に生まれた彼らを「拷問」をしてでも、情報を得ないといけない。

この民兵たちのそれぞれの感情も一枚岩ではなく、拷問を重ねるごとに疲弊し、自分が揺らいでいく様が見て取れたのがよかったです。

 

ちなみに、民兵の中でも、ある人物だけがレジスタンスに自分を投影させない人間であるためか、この拷問をしている状況を客観視して、今後のレジスタンス側の行動を踏まえて、とある命令を部下にします。

その行動を見た彼が、手で口を抑えて感情を落ち着かせた後に「その方が人間らしいじゃありませんか」と言ったのは悲鳴あげるかと思いました…人間を語らないで欲しい…。本当に…。

 

DVDが発売されているので、興味ある方は是非買ってみてください。

http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/

 

 

 

かなりの余談なのですが、上記民兵を演じた阿岐之将一さん、お上品でしっとりとした雰囲気がよく似合う人なのですが、手つきに妙な耽美さがあり、拷問シーンがちょっとエロティックに見えたのは秘密です。