さわらの観劇ダイアリー

私が勝手気ままに舞台について喋るブログです。

2023年上半期の観劇雑記(1〜3月)

もう8月も終わるけども。

北関東の果てから毎週のように特急に乗った上半期。
冬のボーナスが思ったより多かったので、好き勝手に100本は観て良い!という自分勝手ルールを課したら5月で100本観終わってしまった。
演劇、なんでそんなに面白いんだ?

115作品分書くのはさすがに無理なので、月毎に好きだった演劇についてミニマムに書きます。
今回は前半、1〜3月までの舞台の感想総集編です。
書いてたら3000文字以上になったので分けました。
上半期総額チケット代(手数料除く)を出しましたが、思った以上にグロい金額だったので、後半に出します。
★は上半期ベスト。敬称略してます。

2023年1月

現地9配信11(合計20回)
記憶が薄れているが、繁忙期ゆえに身体が動かず新幹線を2回使った記憶がある。お芝居一本分の損失。

1.やみ・あがりシアター「すずめのなみだだん!」
2022年の「マリーバードランド」で名前を知り気になっていた劇団。主宰の笠浦静花の脚本が良い。
土を踏むことにより神の意思を聞いて行動するアニミズム系の架空の宗教団体を抜け出した女の子2人の「外」への触れ方や関わり方の違い、その2人を取り巻く人の優しさが心地良かった。
2023年9月7日〜9月10日に新作あるよ!
やみ・あがりシアター//

2.NTLive「レオポルトシュタット」(映画館)
2022年10月に小川絵梨子の演出で見て、興味を持ち比較したくて観た。レオポルトシュタットこそ〝人種〟の話だと思っていたので、リプレゼンテーションとして描こうとは思ってないんだなぁと思ったりして、西洋、欧米の価値観摩訶不思議と思ったのは別の話。
NTLiveは映画館でブロードウェイ作品が観られるんですが、小劇場価格で観られるので行ってしまいがち。
2023年9月8日からの「ベスト・オブ・エネミーズ」が気になっている。行けたら良いな。
ベストオブエネミーズ | ntlivejapan |bestofenemies| ジェームズ・グラハム| NTLive |デヴィッド・ヘアウッド|ザカリー・クイント|ジェレミー・ヘリン

3.ホリプロ「宝飾時計」
根本宗子作日を観たくて。
根本宗子の描く人間像って基本的に向き合いたくないなと思う感情に真っ向から立ち向かうんだなって気づいた。(めんどくさくて、愛おしい)
アラサー最後の年に観れてよかったな。大人になりきれない部分があっても良いとも思えた。ラストに入る前の「青春の続き」を歌う高畑充希がエモい。

4.ケダゴロ「ビコーズカズコーズ(完全版)」
ダンスカンパニー。
国際交流基金YouTubeで「ビコーズカズコーズ(初演版)」を配信していたのを機に。
1982年の松山ホステス殺害事件の福田和子を基にしている。ダンスとあるが、鉄パイプで覆われた茶の間は牢屋のように見え、刑事として現れるニュートンアインシュタインや彼らから逃げるように上部の鉄格子に駆け上がる8人の和子たちを見るに、ダンスを踊るためのダンス作品ではなかった。
15年間整形を繰り返し時効成立21日前に逮捕された福田和子の壮絶な人生を、肉体で表現する様が良かった。

5.風姿花伝「おやすみ、お母さん」
1月のウェルメイド枠。
那須佐代子・那須凛親子の二人芝居。
母親との向き合い方ってなぜこうも難しいのか。と、主題ではないだろう部分でかなり没入して観ていたと思う。
自殺をしたい娘と、それを止める母親の話なのだが、終始喧嘩腰になりがちで、まるで自分と母親の関係性を観ているようだったのだが、これはきっと人生的にどうやって母親と関係性を気づいてきたかで変わると思う。良好な関係の人はピンとこないと思う。
タイトルとなる台詞がかなり大きな声出ていたのも含め、母親相手にこんなアグレッシブに図太さを発揮できる人でも人生に絶望して一直線に死のうと思うのかとは思う。

2023年2月

現地9配信12(合計21回)
配信でも演劇を観れてしまう人間なので…。なんやかんや多かった。繁忙部署から繁忙部署に回される小間使い人間なので現地は控えめ。

1.惑星ピスタチオ「破壊ランナー」(youtube)
1月に「海底二万里稽古初日」を配信で見て、腹筋善之介のパワーマイム演出を見てみたいなとおもってYouTubeで見たんですけど、めちゃくちゃ面白かった。1995年の芝居だとは思えない色褪せなさ。
人が生身で音速を超える時代という設定も面白いのだけれど、素舞台で肉体と勢いのある台詞で勝負しているところも含めて痺れる。豹二郎ダイヤモンド〜💎
佐々木蔵之介の演技、この時からの蓄積があると思うと色々と面白かった。

★2.木ノ下歌舞伎「桜姫東文章
先に申し上げておくと、私は岡田利規の作演出を面白いと思っていなかった人間である。
「未練の幽霊と怪物」が本当に肌に合わず、何を見させられているんだ?という感覚から一生観に行かん!とすら思っていた。のに、めちゃくちゃ掌返しした作品。サンキュー、成河。
古典芸能というのは、擦りに擦られているので、新しく演出するのも大変だろうなと思うが、話が分かってる人間が多いからこその大胆さもあると思う。
舞台美術のナイトプール感や衣装のポップさから来る若さや、流れ続けるチルっぽさを感じる音楽とゆらゆら身体を揺らしながら気怠そうに話す役者たちの口語訳の緩さ。
なんとなく「何にもなれない存在」として生きているように見えて、演劇って役者が「何かになる」から成立していると思っているが故に、衝撃を受けた。
ハレルヤ!で解放された気分になったので、またやって欲しい。

3.FUKAIPRODUCE羽衣「プラトニック・ボディ・スクラム
国際交流基金YouTubeで「スモール アニマル キッス キッス」を配信していたのを機に。
耳に残る歌詞は一見言ってること分からないや!って私はなっちゃうんですけど、とりあえず観に行って欲しいと懇願するタイプの演劇。
演劇は何にでもなれると思いながら、演劇人生を振り返る役者たちのリアルな世知辛い語りで周りが引くほどに泣いた。

4.博士の愛した数式
2月のウェルメイド枠。
80分という短さは博士の記憶容量。
原作が好きなのもあるけれども、上手くまとまっていて、観やすい作品だった。
た組の加藤拓也の演出は静かだからこそ、心に入り込む辛さを感じる時があるのだけれど、心への入り込み方が優しくて心地よかったのを覚えている。
博士と私と私の息子の柔らかでそれでいて尊重された関係性。好きな作品を演劇で観られたことが嬉しかった。

2023年3月

現地21配信5(合計26回)
推し劇団であるパラドックス定数の公演を10連休にして全通した。11月から3月まで2.5馬力くらい働いたので許された所業。

1.miuna「ザ・フラジャイル レフト/ライト」
「ナイゲン(暴力団版)」の脚本演出、日本のラジオの屋代秀樹さんの作品を観てみたかったため。
レフトは左翼、ライトは右翼を誇張してコミックキャラ的に描かれていて、個人的にはゲラゲラ笑ってしまった。政治的トピックに足突っ込んでる人ほど面白いとは思う。
レフトの中核派あがりのおじ(い)さん(横田慎太郎)の斜め上の行動と、ライトの右翼団体の令嬢(福井夏/柿喰う客)と秘書(渡辺実希)のバッチバチのレディースバトルを収めきれなくてアワアワしてる議員候補(山森慎太郎)と令嬢の彼氏(菊川耕太郎)が印象的だった。

★2.木村美月の企画「幽霊塔と私と乱歩の話」
阿佐ヶ谷スパイダースの木村美月さんの個人企画。
江戸川乱歩の「幽霊塔」を読んでいないので、下敷きにした内容を知らない前提で。
大学の敷地内に入り込んで上映会をしたり、主人公にしか見えていなかった幽霊塔が上映会仲間にも見え始め、幽霊塔へと入り込むシーンなど、子供の頃に読んだ童話やSFの中にある「ワクワク感」の積み重ね、ノスタルジックさもふくめて個人的にはめちゃくちゃ好みだった。
複数の木枠で様々なものを表現していて、その使い方も好きだった。

★3.パラドックス定数「四兄弟」
2020年の無料配信でドツボにハマり、だんだんと観に行けていない公演があることに悔しくなり、ついに(問答無用で)休みを取って全通しました。めちゃくちゃ楽しかった。
ロシア革命からソビエト連邦史への変遷を兄弟というミニマムな構成で演じていく。
劇団員のみで行われる上でいつもの持ち味と役割が当てはめられているにも関わらず、なんでこうも面白いのか。思わず長文でブログにも残した。
7500km先の彼方に揺れる - さわらの観劇ダイアリー
9/1からは2018年〜2019年にシアター風姿花伝プロデュースで行われた7公演のDVDコレクションが完全受注生産で予約開始するし、2024年の新作公演も楽しみ。
paradoxconstant – パラドックス定数 公式ウェブサイト

4.マリー・キュリー
3月のウェルメイド枠。
ラジウムを発見したマリー・キュリーの半生を描いた作品。
口コミで段々と顧客が増えているのを見て、全通期間中にダッシュで駆け込んで、久々に自らスタオベした。
マリー・キュリーの友人として、アンヌという娘が出てくるのだけれど、その子がラジウムガールズとして働き放射能被害に遭ってしまうシーンでは、髪含めた全身に蛍光色の黄緑が散らばり、それが綺麗でゾッとしてしまうところもあった。
フェミニズムも意識された作品で個人的には入り込みやすい作品だったと思う。

2023年3月末時点で
観劇回数67回、初観劇作品55作品。
マジで北関東に住んでる人間の動きをしていないと思うんですが、後半に続きます。